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不動産購入で住宅取得資金贈与の特例を利用する際に知っておきたいこと

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不動産購入で住宅取得資金贈与の特例を利用する際に知っておきたいこと

不動産購入をする際に家族から資金援助を受ける場合、住宅取得資金贈与の特例を利用すれば一定の金額までなら課税対象になりません。そのため、利用したいと考える方は多いかもしれませんが、場合によっては利用しない方が良いこともあります。

今回は不動産購入で住宅資金贈与の特例を利用しない方がいいケースなどについてご紹介いたします。

■住宅取得資金贈与の特例のタイミング

A「今度マイホームを購入するんですが、住宅取得資金贈与の特例を利用しようと思っています。」

B「おめでとうございます!住宅取得資金贈与の特例を利用するには贈与を受けるタイミングが大事なので、事前に確認しておきましょう。」

・贈与を受けるタイミング

住宅取得資金贈与の特例が適用されるためには、住宅購入前に贈与を受けておく必要があります。住宅購入後の住宅ローンや生活費の穴埋めに贈与されたものは、非課税にはなりません。ただし、贈与のタイミングが早すぎても特例が適用されない可能性があるので要注意です。

A「え?住宅購入前でも、早すぎるとダメなんですか?」

B「はい。それは、居住開始のタイミングも決まっているからなんです」

・居住開始のタイミング

住宅取得資金贈与の特例を利用するには、贈与を受けた年の翌年3月15日までに居住を開始する必要があります。しかし、理想の物件に出会えなかったり、建築工事が進まなかったりなどで住宅取得が長引けば、居住開始期限に間に合わなくなる可能性もあるでしょう。

早すぎる贈与が良くないのは、このためです。贈与はなるべく住宅取得の直前に受けるようにしましょう。

・贈与税の申告について

贈与税の申告も特例を利用するための条件です。ここで注意が必要なのは「特例適用によって贈与税が0円になる場合でも申告しなければならない」ということです。申告期限は「贈与を受けた年の翌年3月15日」です。申告書などの書類を郵送で提出する場合は、消印の日付が期限内であれば問題ありません。

B「書類提出までには贈与された資金を使い切っておくようにしてください。資金が余っていた場合は、その余った資金に贈与税が課税されてしまいます。」

A「気をつけます!」

・年末は贈与を避けるべき?

確実に住宅取得資金贈与の特例を利用するには、年末の贈与は避けた方が無難です。年末に贈与を受けてしまうと、居住開始・贈与税申告の期限である「翌年3月15日」まで3ヶ月しかありません。

特に3月は引越しシーズンで業者も多忙なので、予定の日に引越しできないことも想定しておく必要があるでしょう。ギリギリのタイミングで贈与を受けるのはリスクが高いといえます。

■住宅取得資金贈与の特例を利用しない方がいいケース

便利な住宅取得資金贈与の特例も、利用しない方がいいケースがあります。

・親から不動産を相続する可能性があるケース

ひとつは親から不動産を相続する可能性がある場合です。住宅取得資金贈与の特例を利用することによって、もう一つの選択肢である小規模宅地等の特例が受けられなくなってしまいます。

A「小規模宅地等の特例?」

B「かなり簡単に説明しますと、親が自宅に使用していた土地を相続する時に、8割減の評価額で相続できる制度のことです。」

A「相続税を大幅に減らせる制度ってことですね!」

将来、親の自宅を相続する可能性がある人は要注意です。「住宅取得資金贈与の特例」と「小規模宅地等の特例」、どちらを利用した方が節税につながるかをあらかじめ検討しておきましょう。多くの場合、小規模宅地等の特例を利用する方が節税につながります。

・住宅ローン控除制度を併用するケース

住宅ローン控除制度を利用する場合、住宅取得資金贈与の特例と併用しない方が良いこともあります。住宅ローン控除制度とは、以下の2つのうち、少ない方の金額の1%が10年間に渡って所得税の額から控除される制度のことです。

  1. 年末の住宅ローン残高
  2. 住宅等購入の際の対価額から住宅取得資金贈与の特例の適用を受けた援助額を差し引いた額

以下の例で考えてみましょう。

住宅の購入額:5,000万円

土地の購入価額:2,000万円

住宅取得等資金の贈与税非課税制度の適用を受けた受贈金額:3,000万円

住宅ローンの年末残高:4,500万円

上記1,2の額は次の通りになります。

  1. 4,500万円
  2. (5,000万円+2,000万円)-3,000万円=4,000万円

住宅取得資金贈与の特例を利用していなければ4,500万円が住宅ローン控除の対象額になりますが、利用した場合は4,000万円が控除の対象額となってしまいます。

このように、住宅ローン控除制度だけに的を絞った場合、住宅取得資金贈与の特例を利用しないほうが得になることもあるのです。

どちらが得かの計算は難しいので、税理士など専門家に相談する方が良いでしょう。

■住宅取得資金贈与の特例で気を付けたい失敗

住宅取得資金贈与の特例の利用で良くある失敗をご紹介します。

・手付金の支払いに使う

手付金の支払いに使うために贈与を受けるのはおすすめしません。手付金を支払う段階では、住宅購入契約の成立が確定していないからです。

住宅購入がキャンセルになれば住宅を探し直さなければならず、特例適用の条件である「贈与を受けた翌年の3月15日の居住開始」に間に合わなくなる可能性もあります。

贈与された資金は住宅購入の最終の支払いに使うということを覚えておきましょう。

・申告期限を過ぎてから引き渡しになった

建売住宅・分譲マンションの場合、贈与税の申告期限である「贈与を受けた年の翌年3月15日」までに引き渡しを受けていなければなりません。期限内に引き渡しが完了していなければ、たとえ贈与を受けた資金の全額を使って支払っていたとしても、特例の適用を受けることができないのです。

・所得税の合計所得金額が2,000万円(もしくは1,000万円)を超えている

失敗事例として、贈与を受ける側の合計所得金額の確認ミスがあります。住宅取得資金贈与の特例が適用される条件の1つに、贈与を受ける人のその年の合計所得金額が2,000万円(もしくは1,000万円)以下というものがあります。(新築等をする住宅用の家屋の床面積が40平方メートル以上50平方メートル未満の場合は、1,000万円)

A「そんな、いきなり年収が増えることなんてありますか?」

B「自己資金も用意しようと、株式・不動産譲渡や保険の解約などを行って所得が増えていることもありますからね。合計所得金額は給与所得だけではなく譲渡所得など臨時発生の所得も含むため、計算ミスしないように注意しましょう。」

まとめ

住宅取得資金贈与の特例を利用するなら、贈与を受けるタイミングが大切です。しかし、特例を利用しない方が結果的に得をする場合があるということも知っておいてください。特例を利用するかどうかは慎重に判断した方が良いでしょう。

※本コラムの内容は令和3年4月29日現在の法令等にもとづいております。年度の途中に新税制が成立した場合や、税制等が変更されるケースもありますのでご了承ください。

また、詳細について知りたい方は、お近くの税務署や税理士などにご確認ください。